2
th

Natural

1999 年11月公演

Natural

◆1999年11月26日〜30日
銀座小劇場にて

スタッフ

【作/演出】夢野さくら
【照明】芳賀隆幸
【音響】神尾美穂
【装置】奥田有美
【舞台監督】阿部一郎
【振り付け】柴田直伸
【衣装】田中美重
【宣伝美術】小室千恵子・阿部郁子
【制作】柳坂明彦・原田直樹
【協力】FMG・劇団青年座演出部・マガジン企画

キャスト

  • 杉山彩子
    「吉岡 真」役
    杉山彩子
    (--)
  • 小倉昌明
    「吉岡 哲也」役
    小林 隆
    (ケイファクトリー)
  •  原元太仁
    「吉岡 美津子」役
    さたけなおこ
    (--)
  •  柴田直伸
    「二美」役
    田中がん
    (--)
  •  奈良谷優季
    「あんこ」役
    原元太仁
    (森田事務所)
  • 馬場隆昭
    「さゆり」役
    土屋貴司
    (マガジン企画)
  • 土屋貴司
    「小雪」役
    中村嘉夫
    (沢井プロダクション)
  •   田中良
    「かれん」役
    森川 涼
    (FMG)

ストーリー

Chapter1

ある日ニューハーフバー「ピンクドルフィン」に、性同一性障害を抱える男子高校生、吉岡真(杉山彩子)が、働かせて欲しいとやってくる。事情を尋ねるママ二美(田中がん)に、実は今、自分は女なのだと言う事を両親に打ち明け、その為家を追い出されたのだと語る真。
そして真の父(小林隆)は、二美が男だった頃勤めていた会社での、後輩にあたると言うのだ。そのうえ父は、二美が女となった事実を雑誌で知った時も「この人は素晴しい人だ。この人がそう決めたのだから、なにも言う事はないんだ」と真に話していたという。
どうしてもこの店で働かせて欲しいという真に、二美は2つの条件を出す。1つは高校を卒業する事。もう1つは店で働く時は家から通う事。そのとんでもない条件に、戸惑いながらもそれを受け入れ、帰っていく真。その頃、不況に喘ぐ「ピンクドルフィン」にビッグチャンスが訪れる。クリスマス最大のダンスショー「カマナイト」の出場が決まったのだ!

シーン1シーン2

Comment〜舞台裏秘話

夢野さくら:初演出作品です!稽古が始まる数ヶ月前から緊張しまくり、本当に私に演出なんて出来るんだろうかという悩みに翻弄されました…。でも役者さんたちの協力体制がバッチリで、本当に感謝しています。当時まだ脚本を書き始めて2本目で、やりたい事を本の中身だけで伝えるという技術が足りなかったんですが、演出をやっているとちゃんと伝わるんだという事を実感しました。芝居の評判も凄く良かったし、稽古場もメチャクチャ楽しかった!

杉山彩子(主演):性別が一致している人が殆ど出ていないという、異色の舞台「Natural」…。私の役は男の子からニューハーフへと変貌をとげる。なので最初は、象徴的に学生服での登場となったのだが、この学生服…探すのが大変だったのよねー!!!確か、小雪ちゃん役の嘉夫君の、日体大の後輩に借りたような気がする。いくら男らしい骨格の私でも、一応は女だから、サイズがねー。

Chapter2

真の睾丸摘出手術が迫ってきていた。父哲也は、真が女だという事実を全く受け入れず、現実から背を向け、妻・美津子(さたけなおこ)との間にも深い溝が出来ていた。
真の告白から1年、美津子は真の性同一性障害を治す為、連日病院を回っていたが、結局、治す=性転換手術という事実に直面するしかなかった。睾丸を取ってしまったら、もう真は自分の子供を作る事が出来ない。子供を持つという何物にも変えがたい喜びを、あの子の手から奪ってしまう。だがこれ以上苦しんでいる真を黙ってみている事は出来ない。そう決心し、哲也に手術の事を打ち明ける美津子。取り乱し、妻に食って掛かる哲也。
その夫に「どんな姿になったとしても、真は私たちの子供です!」と言い切る美津子。その母に「私でごめんね」としか言えない真。そんな真を笑い飛ばし「あんたが理想の子」と話す美津子。真は母の小さな背中を見つめながら、黙って自分の平らの胸を触るしかなかった。

シーン3シーン4

Comment〜舞台裏秘話

夢野さくら:「どうしてニューハーフの話を書こうと思ったの?」とよく聞かれます。この話はTVのドキュメント番組を見ていて思い付いたんですけど、ちょうど世間で性同一性障害という言葉が騒がれ出した頃で、埼玉医大で日本の第一号の性転換手術が行われたりと、いろんなタイミングが重なって出来た作品です。でもニューハーフの世界なんて全く知らなかったので、いろいろ調べなきゃいけない事山積みで、図書館とかに通いまくりました。

杉山彩子(主演):平らな胸を触るシーンは、結構切なくて人気が高かったのだけど、もともと平らな胸を持つ私も、一応細工はしていたのだ。必殺胸潰しブラジャーなるものを考案し、稽古をし乍らチクチク縫っていた。これは「Natural・2003」でも大活躍!現在も今後の為にきちんと保管しております。しかし、本番前日に鬼のような演出家(笑)に、このシーンの台詞を変えると言われたお母さん役のなおこさん…。かなりパニっていたけど、結果は大成功! でも一寸あせった…。

Chapter3

初めての「カマナイト」で優勝を逃してしまった「ピンクドルフィン」。それと言うのも数ヶ月前、小雪(中村嘉夫)が付き合っていた桜井という彼を、かれん(森川涼)が奪い取った事にあった。それから数ヶ月が経ち、何とか2人の仲も元に戻ってきた矢先、今度はかれんが桜井を振ったという噂が流れる。本当なのかと詰め寄る小雪に、「よく知ってるわね」とあっさり答えるかれん。実は桜井は、かれんの初恋の人だったのだ!中学の時から一途に桜井だけを思い続けてきたかれん。彼を忘れる事が出来ず、奔放に振舞う事しか出来なかった。しかし桜井は、昔のかれんを思い出す事もなく、自らの初恋の相手と再度めぐり合い、かれんの元から去っていった。自分は女じゃないから好きになって貰えないと泣きじゃくるかれんに、「かれんちゃんが桜井さんじゃなきゃダメだったように、桜井さんもその人じゃなきゃダメだった。ただそれだけの事なのよ」と静かに語って聞かせる二美。

シーン5シーン6

Comment〜舞台裏秘話

夢野さくら:この場合のオカマちゃんたちの心は、「完全な女」なのだという設定で話を作っています。実際にはもっといろいろあって、そんな単純な事じゃないと思いますけど…。 かれんのキャスティングには、本当に苦労しました。とにかく私のイメージとして、「美しくなきゃダメ!」が大前提だったので、候補は数人いたんですけど、ルックス重視で選びましたぁ。その甲斐あって、後々まで「かれんちゃん美しかった」という評判を頂きました!

杉山彩子(主演):このシーンってなぜだか夕飯休憩後にやることが多くってね。殆ど小雪ちゃんとかれんちゃんの独壇場だから、他の皆は時々入れるあいづちだけで、後は聞いてるだけ。疲労も溜まって眠気もピークに達すると、もう一言しか無いあいづちの台詞もボロボロに…。ほんと、笑っちゃうくらいぼろぼろなの。でも、嘉夫君は凄かった!そんな中でも、素晴しい演技で観ている人の胸を熱くさせてしまう。泣き崩れる嘉夫君の目からは不思議と涙は出ないんだけど、周りが泣いてしまうのよねー

Chapter4

「カマナイト」の予選の日がやってきた。真はその日、二美に家を出たいという話を持ちかけていた。両親の仲が拗れ、母が離婚を考えているという。その真に二美は自分の過去を語り出す。昔、決して受け入れてもらえないと、全てを捨てて出てきた自分。しかし連絡を絶っていた弟から、母が倒れたと知らせがあった。迷っていたが、もう一度家族と向き合ってみようと決めた。「それを教えてくれたのは真、あなたなのよ」と。その時哲也が店に飛び込んできた。なんと、美津子が心労の為倒れてしまったというのだ!哲也にお前のせいだと怒鳴られた真は「普通の人になりたいの!心と身体がちぐはぐじゃない、普通の人に!」と泣き叫ぶ。二美は哲也に「覚えてる?真の名前の由来」と話しかける。真という名前には「世間の変な常識に囚われない、心の真を持った人間になれ」という哲也の心からの想いがあったのだ。親子の心に微かな橋が掛かった時、ついに「カマナイト」の幕が上がる!

シーン7シーン8

Comment〜舞台裏秘話

夢野さくら:この話を思いついた時、同時にキーワードとして「真の名前の由来」が頭に浮びました。 何ものにも揺るがない「心の真」を持つ人間に…本当はこういう人に自分もなりたいという気持ちの表れだったのかも…。題材としてニューハーフの人々を使ってますが、これは親子のドラマなんですよねぇ。親と子が信じあい、本当に分かり合えた時、そこからなにが生まれるかというところを描きたかった。とても大好きな作品になりました!

杉山彩子(主演):この「Natural」は、スパコン初のダンスシーンがありました。しかもバニーで…。ダンス初心者の私はもう、ヘロヘロに…。でも皆、とってもキュートでした。男のバニー姿って、一種異様なものがあるけどね。そして勿論、お約束のようなハプニングも…。あんこちゃん役の原元さんは毎回何かやらかすけど、この時は、衣装のスカートが脱げちゃって、黒い海パンのみの鉄腕アトム状態に…。びっくりした。

▲このページのTOPへ

連載モノ

連載小説
携帯公式サイト「The News」で連載され、約10,000アクセス/dを記録した「14番目の月」。 大好評連載中!
日記
夢野さくらのブログ。
日常生活が覗けちゃう・・・かも
稽古場日誌
この公演はいかにして創られたのか!
稽古風景をちょっとだけ紹介しちゃいます。
 All written by: 夢野さくら